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■中国*寧夏回族自治区*銀川(インチュアン)*「たび重なる事件②」

ホテルの女性に連れられ、公安警察で、大まかな事情を彼女は話してくれたようだった。

確認のため、私も警官に大まかな事情と、被害証明が欲しいことを伝えた。
私に少し待つように警官が言い、彼女は安心して帰っていった。

しかしその公安内は私の被害届けどころではなかった。

私が座らされた椅子から、開きっ放しの扉の隣の部屋の一部が見えた。
その奥から、男の泣き叫ぶ声が響いていた。
それは悲鳴に似ていた。
その男は尋問(?)を受けている様子だった。
何か壁に叩きつけるようなゴンゴンという鈍い音やら、時たま怒鳴り声も聞こえる。
入り口に靴が1足放り出されていた。
床上30cmにはパイプのバーが備え付けてあり、手錠がぶら下がっていた。
入れ替わり立ち代り、複数の警官が出入りしている。
新聞紙にくるまれた長い棒状の物や、私にはどう使うのかさっぱりわからない物体を持ち込んでいる。
現場は見えなかったが聞くに堪えず、いつまで待つのか尋ねたが、まだ待てと言う。
2時間程その状況の中待たされた。

仕方ないので、警官達のランク付けをして時間を潰した。
誰が上司で誰が下っ端か。

そのうち隣の部屋は静かになり、救急と書いた大きなカバンを持った白衣の人が、武装警察と共に現れ、同時に私にもラフな格好の通訳がやって来た。

その人は今まで私が付けたランクでいきなりトップにおどり出た。

彼は通訳ではなかった。
自ら私に流暢な英語で質問してきた。
なぜ、盗難だと思うのかから始まり、合作の町で訪ねられたような、旅行に関しての細かい話しを訊かれた。

そして当然の質問になった。
「どこのホテルに泊まっているんですか?」
答えると、部屋の空気が変わった。
私は瞬時に理解した。


中国にはホテルは2種類ある。
外国人が泊まっていいホテルと、いけないホテル。
それは私達ツーリストには一見しただけでは判らない。
訪ねて断られれば、外国人を泊めてはいけないホテルだ。
しかし貧乏旅行者が泊まるような安宿は、外国人を泊めるライセンスを持っていないのに、こっそり泊めていることがほとんどだ。


いきなりそのエリートが警官達に指図を始めた。
そして私に言った。
「あなたはこの後、私が紹介するホテルに移らないといけません。あなたが泊まったホテルは外国人を泊めてはいけないホテルなのです。」

あのホテルが摘発される!

私は歌舞伎町で何度も、いや何十回も、店が摘発される現場を見ている。
容赦なく、店内の重要なものは運び出され、その日からその店は営業停止だ。
そして従業員は逮捕され、しばらく刑務所暮らしだ。

今朝丁寧にバスターミナルへの行き方を教えてくれた女の子や、カメラを無くして相談に乗ってくれた2人の女の子、ここまで連れてきてくれた女性、のことが頭に浮かんだ。

なんてことになってしまったんだ!
被害届けなんて出さなきゃよかった!
私のせいでこんなことになるなんて!
自分に悔しくて涙が出てきた。

そしてエリートはにこやかに、私にカメラの盗難被害証明書を渡したが、私はちっとも笑う気になれなかった。

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リサ婆

現在無職。日本在住。
バーのママ歴
中野で4年
歌舞伎町で12年
海外旅行歴
人生の中で延べ約4年
約50ヶ国
春からカレー屋をやるべく、現在奮闘中。

!注意!お願い!
本文中、イスラム教を国教とした国の事を「イスラム国」と書いたのがたくさん出てきますが、それを書いた時点ではまだイスラム国(ダーイッシュ、ISIS)が無かったため、そのような表記になっております。
ですので本文中にある「イスラム国」は、ISISとは関係なく「イスラム教の世界」「イスラム教を国教とする国」というニュアンスでお読みください。

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